コラム
2021/05/07
HEAT20、ZEH、LCCM…省エネ住宅の指標とは?
皆様は、「ZEH(ゼッチ)」という言葉を聞いたことがありますか?新築戸建てをご検討中の方は、特に聞き覚えがある言葉かも知れません。しかし、どういった意味があるのか、わからないという方は多いのではないでしょうか?「ZEH」とは、省エネ性能の高さを表す指標で、実は省エネを目指すZEHに似た指標がその他にもあります。そこで今回は、複数ある省エネ住宅の指標をご紹介していきたいと思います。
省エネ住宅のメリット
省エネ住宅とは、断熱、気密、換気、結露を防ぐなどの性能が従来よりも優れた住宅のことを指します。省エネを達成するには住宅の高性能化が必要になります。そのため省エネ住宅には、夏涼しく冬暖かい、光熱費が安くすむ、健康の維持ができるなどのメリットがあります。その他にも、国の税制優遇措置を受けられる場合があります。
省エネ住宅の指標について
省エネ住宅には様々な考え方があり、それによって様々な指標があります。省エネ住宅の指標になる制度で代表的なものは以下の3つです。
・HEAT20
・ZEH(nearlyZEH、ZEHready、ZEH Oriented)
・LCCM住宅
これらは目的や基準が違いますので、それぞれご紹介いたします!
1.HEAT20
まずは、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称であるHEAT20です。HEAT20は住宅の更なる省エネルギー化をはかる上で、断熱性能に着目した組織です。断熱性能の向上と居住者の健康維持・快適性向上を目的として活動しています。
HEAT20の基準
断熱性能を測る指標としてUA値というものがあります。UA値とは、どれだけ熱を通しやすいかを表している指標で、ゼロに近いほど性能が高いと言えます。HEAT20では、このUA値の基準のみが下記の表のように地域ごとに定められています。
推奨グレード |
地域区分 |
||||||
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
|
HEAT20 G1 |
0.34 |
0.34 |
0.38 |
0.46 |
0.48 |
0.56 |
0.56 |
HEAT20 G2 |
0.28 |
0.28 |
0.28 |
0.34 |
0.34 |
0.46 |
0.46 |
この地域区分は後でご紹介するZEHとも共通の区分です。市区町村別に細かく分けられていますが地域区分1、2は北海道、3は東北や関東などの地域が当てはまります。私たちが住む熊本は、地域区分5、6に該当します。
また、HEAT20では断熱性能をG1、G2というグレードに分けて、どれくらい冷暖房費が削減できるかというデータを示しています。
それでは、HEAT20はどれくらい厳しい基準なのでしょうか。国が定める最低限の断熱基準は、省エネ基準法で示されているUA値=0.87です。この国の基準と比べるとかなりレベルの高い数値であり、HEAT20の基準をクリアするのはなかなか難しく、HEAT20自体の普及はあまり進んでいません。
加えて、省エネ住宅のメリットの項で言及している通り、省エネ住宅には断熱の他にも気密、換気などの性能向上が重要です。断熱性能だけを満たすのでは、決して高性能な住宅になるとはいえませんので、注意が必要です。
2.ZEH
続いてZEH(ゼッチ)です。ZEHはなんとなく聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
ZEHとは「Zero Energy House」の略で、生活する上で消費する電力(マイナス)と太陽光発電などにより創出するエネルギーの量(プラス)の差をゼロ、もしくはプラスになるようにした住宅です。地球環境保全の観点から、国は住宅における省エネルギー化達成目標を掲げて積極的に取り組んでおり、国土交通省によりZEHに対する補助金制度も定められています。今後、新築のZEH義務化も検討されているので、ぜひ抑えておきたいワードです。
ZEHの基準
ZEH実現のためには使う電力を少なくし、かつ電力を生み出すことが必要です。その2つの観点から下記の様なZEH判断基準が設定されています。
(1)建物本体の性能(断熱、日射遮蔽・取得、気密、結露を防げるかなど)に留意されていること。
(2)基準のエネルギー消費量から20%以上のエネルギー消費量が削減されていること。
(3)再生可能エネルギー(太陽光発電など)が導入されていること。
(4)再生可能エネルギーと差し引きして、基準一次エネルギー消費量から100%の一次エネルギー消費量が削減されていること。
(1)の断熱に関しては下記のように具体的なUA値基準があります。地域区分はHEAT20で説明がある通りです。
地域区分 |
|||||||
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
|
ZEH |
0.4 |
0.4 |
0.5 |
0.6 |
0.6 |
0.6 |
0.6 |
(1)~(3)を満たした上で、(4)のエネルギーの収支100%以上削減という基準を緩和し、エネルギーの収支が75%以上の削減ができている「nearly ZEH」という基準もあります。その他、東京都などの住宅密集地では太陽光発電が難しいということを考慮し、創出するエネルギー量がなくても、住宅本体の性能が基準を満たしていればZEHと認定する「ZEH Oriented」という制度もあります。
また、アメリカでは「ZEH Ready」という考え方もあり、これは創出するエネルギーに頼らずに住宅性能の向上のみによって、消費するエネルギーを50%削減するというものです。
ZEHについても断熱性能の基準はありますが、創出するエネルギーが大きければ達成できる指標でもあるので、HEAT20同様に住宅性能という観点では注意が必要です。
3.LCCM住宅
最後にLCCM住宅のご紹介です。LCCMとは「Life Carbon Cycle Minus」の略で、長寿命で且つより多くのCO2削減を目標とした制度です。名前の通り、住宅の建設、居住時、廃棄までの一生涯、つまり住宅のライフサイクル全体で、空気中へのCO2排出量をマイナスにする住宅のことです。
LCCM住宅の基準
⼀般財団法⼈建築環境・省エネルギー機構(IBEC)がLCCM住宅の認定を行っており、ランク別に緑の☆の数で住宅を評価されています。IBECによる評価で☆☆☆☆☆を取得すると、LCCM住宅として認定されます。
ライフサイクル 全体のCO2排出率 |
性能水準のイメージ |
IBECによる ランク表示 |
100%を越える |
非省エネ住宅 |
緑☆ |
100%以下 |
≒現在の新築住宅の一般的なレベル |
緑☆☆ |
75%以下 |
≒建物や設備の省エネ、高耐久等の積極的な取組みで達成できるレベル |
緑☆☆☆ |
50%以下 |
≒建物や設備の省エネ、高耐久等の積極的な取組みに加えて、一般的規模の太陽光発電を設置するレベル |
緑☆☆☆☆ |
0%以下 |
≒建物や設備の省エネ、高耐久等の積極的な取組みに加え、規模の大きい太陽光発電の導入等により達成できるレベル。 LCCM住宅に認定可能 |
緑☆☆☆☆☆ |
表にある通り、LCCMはCO2の排出率を基準とし、ZEHを更に発展させた指標で認定が厳しく、2012年に国による助成金制度が始まってから180件ほどの認定数にとどまっています。
まとめ
以上、省エネ住宅の3つの指標をご紹介しました。いかがでしたか?今後ますます環境問題の観点から重要視される省エネ住宅。冒頭お話した通り、省エネ住宅とは高性能な家です。「光熱費を抑えたい」「夏涼しくて、冬暖かい家にしたい」などのご要望が第一優先という方は、「省エネ住宅」をキーワードにハウスメーカー選びをしてみるのも良いかもしれません。
高性能な家のメリットについてはこちらのコラムで詳しく解説しています!ぜひご一読ください。
https://www.arc-logic.net/column/detail877/
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